
DTMでギター録音している人って、どう録音しているんだろう。
これからDTMを始める方やギターの録音に挑戦したい方の中には、こうした疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。
また、実際にDTMで録音をしてみて
「他の人よりクオリティが低い気がする」
「もっとクオリティを上げたい」
こう悩む方も少なくないはずです。

僕もそう悩んで、たくさん試行錯誤したよ。
この記事では、「録音クオリティを上げたい!」と常に考え3年間試行錯誤した僕が"実際に行っているギターの録音方法"について詳しく紹介していきます。
運営者情報

1102(ひとつ)
2022年8月「ヒトツノオト」でデビューしたギター歴10年以上のボカロP。
バンドサウンドを主軸とした楽曲を制作。
ニコニコ動画、YouTubeに楽曲動画配信中。
はじめに

まずはじめに、この記事で紹介するのはあくまで「僕自身のギター録音方法」です。
これが正解というわけでも、録音の全てを網羅しているわけでもありません。

こんな方法があるんだ。
のように気軽に読んでください。

参考になりそうな部分があれば、ぜひ録音方法として取り入れてみてね。
また、この記事内では専門用語や技術的な内容が多数出てきますが、難しい部分には詳しく解説した記事のリンクを"関連記事"として貼っています。
ぜひそちらも合わせてご覧ください。(数が多いため関連記事は随時追加中です。)
※ギター録音において一番大切なこと
ギター録音においては、
・高音質での録音
・高度な演奏技術
・高度な編集能力
などが求められます。
しかし、それ以上に大切なことは"ギター録音を楽しむこと"です。
ギター歴が10年ある僕でも、
「こんなギター音源じゃダメだ、録り直し」
「もっと練習しなければ良いギターが録れない」
のような、義務的な意識を持ちながらギターを録音していることがあります。
しかし、義務的な意識を持ちつつ録音しているときは決まって良いテイクが録れません。
そういったときは一旦気持ちを落ち着かせ「楽しんで弾く」を意識するようにしています。

そう思いながら録ると、あっさり良いテイクが録れた!!ってことが何回もあるよ。
「もっとクオリティの高いギターを録りたい!」と思うのは自然なことですが、DTMやギター初心者が最初から高クオリティを目指すのは、正直かなり難しいです。
この記事の内容は正直、ギターやDTM初心者には難しくハードルが高い内容だと思います。
もしこの記事の内容が理解できなくてもあまり深く気にせず、「まずは楽しくギターを弾く」を第一にしてください。
ギター参考楽曲を紹介

えらそうなこと言っているけど、自分はクオリティ高いギター録音できているの?

できているよ!!...多分。
まずはギターの参考例として僕の楽曲を2曲紹介します。
まずはギターがしっかりと目立つラウドロックな楽曲"星屑のパレット"です。
1年以上前の楽曲にるため今の録音方法と少しだけ異なる部分もありますが、重要な部分はこの記事で紹介する方法と変わりません。
次は最新楽曲"ガチャロック"です。
こちらはこの記事で紹介する方法で録音してはいますが、ポップでカワイイ楽曲ですので、あまりギターが目立っていません。
僕はこの記事で紹介している方法で、上記のような楽曲を制作しています。
※ギター初心者ではありません
僕は3年前にDTM・ボカロPとしての活動を始めましたが、当時すでにギター歴は約10年ありました。
ここで言う"DTM歴3年"は、「DTMやギター録音を始めてからの年数」を指しており、「ギターの演奏歴」ではない点はご了承ください。
現在の録音環境

録音方法の前に、僕の録音環境についての紹介です。
また、ギターを録音する方法は大きく分けて以下の2つあります。
僕はこのうち、ライン録音でギターを録音しています。
使用機材
僕がギター録音に使用している機材はこちらです。
これらの機材を、以下のように接続しています。


オーディオインターフェースに繋いでいないんだね。

GT-1000がオーディオインターフェースの役割を兼ねているよ!
オーディオインターフェースは持っていないの?

どうしてオーディオインターフェースに接続しないの?持っていないの?

持っているよ!昔は繋いでいたんだねどね...。
僕はDTMを始めた頃、オーディオインターフェースは"ギターを録音するにあたり必ず必要な機材"だと思い、TASCAMのSERIES 102iを購入しました。


DTMを始めた当初はこのSERIES 102iを使用してギターを録音していました。
オーディオインターフェースを使わないの?

オーディオインターフェースあるなら使えば良いのに。

使ってはいるよ!
オーディオインターフェースは、主にスピーカーへの出力用として使用しています。
GT-1000で録音する理由

どうしてオーディオインターフェースがあるのにGT-1000で録音しているの?

主に"音作りがしやすい"と"CPU負荷を気にしなくて良い"の2点!
なお、厳密にいうとGT-1000があれば「オーディオインターフェースが必要ない」ではなく、「GT-1000にオーディオインターフェース機能が搭載されている」です。
AmpliTubeで音作り
SERIES 102iにはIK MultimediaのAmpliTub(アンプシミュレーター兼エフェクトプラグイン)の体験版が付属しています。
AmpliTubeのみで音作りをすることも試してみましたが、どうしても"歪み"の音が自分には合いませんでした。
その結果として取り入れた方法は、「物理エフェクターで音作りをする」です。

GT-1000導入前は1年間ほど、
物理エフェクターで音作り
↓
オーディオインターフェースに接続
↓
AmpliTubeのアンプシミュレーターを通して録音
という流れで録音をしていました。
この方法が正しかったのかは、正直いまだによくわかっていません。
AmpliTubeのデメリット
AmpliTubeはとても優れたプラグインで、今でも切り替えたくなるほどの魅力を感じています。

TONEXと合わせて使ってみたい
しかし、当時の僕にとってはどうしても受け入れられないデメリットがありました。
それは"CPU負荷の大きさ"です。
当時使っていたMacBook Proはスペックが高くなかったため、Amplitubeを複数立ち上げ録音していると次のようなトラブルが頻発していました。
はっきりとは覚えていませんが、これらの問題が起きたら録音を中断して音源をバウンスしてまた録音...というような面倒な手順を繰り返していた記憶があります。

すごくストレスに感じていたのだけは覚えてる。
CPU負荷を気にしながらの録音は、精神衛生上良くありません。
順調に録音していたのに
⚠️突然ノイズが混ざることも!!
↓
🤯常にヒヤヒヤしながらの録音...
🎧録音後、聞き直す
↓
🐝録音時に気づかなかったノイズを発見
↓
🎸録音やり直し
という経験もあります。
CPU負荷をかけない録音方法
CPU負荷をかけない録音方法として、
・バッファサイズを上げる
・トラックをフリーズ
などの方法がよく挙げられます。
これらの説明はここでは割愛しますが、CPU負荷をかけなくする反面デメリットもあります。
さらに僕の場合、これらを行っても結局ストレスなく録音することはできませんでした。

意味ないじゃん!!
そこで僕は

AmpliTubeとかのプラグインじゃなくて実機で録音すればCPU負荷かからなくない?
という天才的で究極のアイデアを思いつきました😎
GT-1000を導入
CPU負荷を極力かけない録音として考えた結果、"マルチエフェクター"の使用をすることに決めました。
候補はいろいろありましたが、次のような理由からGT-1000を選択しました。

✅BOSS / GT-1000
✅LIne 6 / Helix(Floor, LT)
✅ Neural DSP / Quad Cortex
上記のような、
・高度なモデリング技術
・高精度なIRに対応
・柔軟なルーティングやMIDI制御に対応
こういったハイエンドマルチエフェクターのことを「ギタープロセッサ」と呼びます。
ギタープロセッサは高価格帯なものとなり、10万円前後〜30万円程する機種まであります。
⚠️当記事では混乱を避けるために「マルチエフェクター」と表記しています。
GT-1000を導入する前は、BOSSのMS-3というマルチエフェクター機能付きスイッチャーという少し変わった機材を使っていました。

MS-3はGT-1をベースにしたエフェクトを内蔵しており、マルチエフェクターとしても非常に完成度の高い機材です。

ディレイ以外の空間系とかモジュレーション系は全部MS-3でしていたよ!
ただ、歪みの音がチープで正直なところ「これは使えないかな」と感じていおり、GT-1000の歪みも全く期待していませんでした。
ところが実際に使ってみると、歪みの質(正確にはアンプシミュレーターの歪みの質)が圧倒的に良く「これがAIRDか...」と驚かされました。
当初はセンドリターンに歪みエフェクターを接続する予定でしたが、結局GT-1000だけで完結させています。
ちなみに僕のお気に入りの歪みエフェクター(厳密にはプリアンプ)はBorner のEcstasy Redというペダルです。

GT-1000導入に伴い箱入り娘となりましたが、年季の入った10年物です。

生産終了になって若干プレ値が付いてきてるみたい。
Macの買い替え
使用しているMacのスペックが低く、CPU負荷をかけない方法としてGT-1000で音作りをしていると紹介しましたが、僕は2024年12月にM4 MacMiniに買い換えました。

通常のM4チップでメモリは32GBに増設したよ。
このMacであれば、おそらくプラグインを使用しての録音も快適にできると思うので、AmpliTubeとTONEXでの録音も気になっています。
最近はこの2製品が激安セール価格で頻繁に販売されており、何度も誘惑に負けそうになりました。
近いうちにAmpliTube6と、もしかするとTONEX2的なものが登場するのかもしれません。
とはいえ、今のところは誘惑に勝ちGT-1000のみでギター録音を完結させています。

でも一回、本当に買おうとしてたよね。

いつも凄くお世話になっているボカロPさんにいろいろアドバイス貰って、踏みとどまった☆
ギター録音における設定方法

次は、ギター録音時に行なっている設定方法についてご紹介します。
この設定はテンプレートとして保存しており、すぐ録音作業に取り掛かれるようにしています。

毎回設定していたら時間の無駄だもんね!!
繰り返しになりますが、僕の使用しているパソコンはMacで、録音時の使用DAWはLogicです。
そのため、この記事ではLogicを使った設定方法を解説していきます。

画面や設定方法は違うけど、他のDAWでも同じようにできるはずだよ!
プロジェクト設定

まずはプロジェクトの設定から見ていくよ。

録音の基盤となる部分だね。
チューニング:442Hz
僕が制作する楽曲は、チューニングを442Hzに合わせています。
これはプロジェクトに対する設定ではないため、設定自体を変更する必要はありません。
その代わり、使用する音源ごとにチューニングを合わせる必要があります。

録音時に使うピアノやシンセ、ベース音源はチューニングを442Hzに設定してテンプレート化してるよ。
以下は僕がよく使用する音源プラグイン「SERUM2」の設定画面です。

少し見づらいですが、赤枠で囲った部分で442Hzに設定しています。
自分でしておきながらですが、新しい音源を使う際はまずチューニングの設定方法を調べる必要があるため、正直少し面倒です。
これに関してはあまり意味のない"こだわり"ですので、特に意識せずに標準の440Hzで設定しておくことをおすすめします...。

ほとんどの音源の初期設定は440Hzだよ。
サンプリングレート:96kHz
GT-1000の録音可能な最大サンプリングレートは96kHzです。

サンプリングレートって何?

1秒間に何回、音の情報を取得するかを表す数値のことだよ。
サンプリングレートは少し分かりづらい設定ですが、数値が高いほど音を細かく記録できるため「高音質になる」とされることが多いです。
ただし、サンプリングレートを上げるとパソコンへの負荷も大きくなってしまいます。

スペックが低いパソコンの場合は、低く設定した方が良さそうだね。
また、YouTubeや配信などに投稿すると「最終的に44.1kHzや48kHzに変換されるから96kHzで録音しても意味がない」という意見もあります。
僕は高音の鳴り方が96kHzの方が綺麗に感じた"気がした"ので96kHzで録っていますが、パソコンへの負荷等考えると48kHzくらいが無難かもしれません。
Logicでサンプリングレートを変更する方法は、
メニューバーから"ファイル>プロジェクト設定>オーディオ"の順に選択すると、以下の画面が表示されます。

ここの「サンプルレート」の値を変更することで、プロジェクトのサンプリングレートが変更されます。

"サンプルレート"と"サンプリングレート"は同じ意味だよ。
入出力デバイス設定
次に入出力デバイスの設定です。

ここでは何を設定できるの?

DAWに対して音を送る機器とDAWから音を送り出す機器の設定ができるよ。
入力・出力デバイスとは?
入力デバイスは音を送る機器、出力デバイスは音を送り出す機器となります。
例えばGT-1000を使ってギターを入力しスピーカーから音を出したい場合、
・入力デバイス:GT-1000
・出力デバイス:オーディオインターフェース
に設定します。

また、この設定はプロジェクトごとの設定ではなくLogic本体のオーディオ設定です。
そのためテンプレートには保存されず、プロジェクトを開くたびに確認・設定が必要になります。

プロジェクトに関わらず、基本的に前回閉じたときの設定が継承されるよ。
【入力デバイス】
Logic"へ"音を送る機器。
例:
オーディオインターフェース
(ギターやマイクの音を入力 )
マルチエフェクター
パソコン内蔵マイク
【出力デバイス】
Logic"から"音を送り出す機器。
例:
オーディオインターフェース
(スピーカーから音を出す)
パソコン内蔵スピーカー
入出力デバイスの設定方法
メニューバーから、
"LogicPro>設定>オーディオ"の順に選択すると以下の画面が表示されます。

この画面内の「出力デバイス」と「入力デバイス」で、入出力デバイスの設定を行ってください。

僕はギター録音時、どちらも"GT-1000"に設定しているよ。
なぜ"出力"もGT-1000?

どうして出力デバイスもGT-1000なの?

リアンプをしたいからだよ。
入出力をGT-1000に設定したうえで、
・インプットにギターを接続
・ヘッドホン出力にヘッドホンを接続
こうすることで、以下のように音が出ます。


これってギターだけじゃなくてDAWで再生したドラムとかの音も聴こえるの?

もちろん!DAWから出力された音がそのまま出てくるよ。
GT-1000に限らず、多くのマルチエフェクターでは「リアンプ」という手法が使えます。
僕はGT-1000でギターを録音する際、エフェクターを通した音(ウェット音)と通していない音(ドライ音)を同時に録音しています。
そして後から、録音しておいたドライ音をGT-1000に送り直し、改めてエフェクトをかけて録音します。
これがリアンプです。
リアンプを行うためには、Logicの入出力設定をどちらもGT-1000に設定する必要があります。
つまり音がGT-1000から出力されることになるため、GT-1000にヘッドホンやスピーカーを接続する必要があります。

僕はヘッドホンを繋いでいるけど、スピーカーを繋ぐこともできるよ。
ギター録音の手順

それでは、DTM歴3年・現役ボカロPである僕たどり着いたギター録音の手順について、詳しく紹介していきます。

いよいよ本題だね。
これはあくまで僕自身の録音方法であり、これが「録音の正解」というわけではありません。
「こういう方法もあるんだ!」と、参考のひとつとして読んでいただければ嬉しいです。

もちろん、1から10まで全部真似しちゃっても良いよ♡
全体の流れ

まずは全体の流れをざっと紹介するよ。
- プロジェクトの設定
- 必要なトラックの作成
- 正確なチューニング
- ギターのアレンジ・練習
- 正確なチューニングをしつつ録音
- 録音ファイルの結合
- 音源の補正

結構していること多いんだね。
この中で最も大切なことは、
・チューニングは確実に
・ドライ音は残しておこう
です。
それでは詳しく解説していきます。
トラックの作成
まずはトラックの作成からです。
このトラックも設定と一緒にテンプレートとして保存しているため、録音プロジェクトを立ち上げたらすぐに録音を始められるようにしています。
テンプレートのトラック
僕はテンプレートとして、以下のようにトラックを作成しています。

これを元に録音プロジェクトを立ち上げ、その都度必要に応じてトラックを追加・削除していきます。
使用するギタートラック
主に使用するギターパートは、
・バッキング
・リード
です。
パートごとにメインとダブリング、それぞれドライとウェットの計4トラックを用意し"サミングスタック"としてまとめています。
また、空間系やモジュレーション系のエフェクトをかけステレオ録音することもあるため、ステレオ用のトラックも用意しています。

ステレオトラックはダブリングは無しのウェットとドライの2トラックだけだよ。
🔴Recトラックを使用しギターを録音
↓
➡️終わったらパートごとのトラックへ移動
という流れで録音を行なっています。
上記スクショ画面のトラック番号でいくと、
🔴4にウェット、5にドライ音を録音
↓バッキングの場合
🎸4の音源を7へ、5の音源を8へ移動
ちなみに、
トラックをまとめる"サミングトラック"も
1つのトラックとして扱われます!
チューニング

トラックを作成したからいざ録音!
といきたいところですが、その前にしっかりとチューニングを行いましょう。

チューニングは狂いなく確実に合わせよう!
チューニングを行うタイミング
僕はギター録音時、フレーズごとに以下のような流れで行っています。
- ギターフレーズを考える
- 練習する
- チューニング
- 録音
ギターフレーズを考えたり練習する際はそこまで正確に合わせていません。
しかし、録音する前には±0.1セントの精度を持つチューナーで寸分の狂いなく合わせるように心がけています。
チューニングは何度してもOK
ギターの録音は早ければ1テイク、納得のいくテイクが録れず多い時で100テイク程録ることもあります。

すぐに終わるとは限らないんだね。
長時間に渡って録音を行なった場合、だんだんとギターのチューニングが崩れてくる可能性があります。
そのため、録音の途中で休憩がてらチューニングを見直すようにしています。

確認してみると数セントずれてた...とかよくあるよ。
少しのピッチのズレが後々楽曲の違和感に繋がることもあるため、正確なチューニングで録音に挑みましょう。
関連記事:
ギターを録音

トラックも作った、チューニングもした、いざ録音!
分割して録音
ギターに限らず、録音はできるだけ1フレーズ通して録るのが理想的です。

繋ぎ目が少ないほど、自然なギター音源になるよ!
とはいえ、僕は苦手なフレーズや難しいフレーズは分割して録音することもよくあります。

1フレーズ通して弾けるように練習してから録音すれば良いんじゃない?

いや、それに関しては...はい、おっしゃる通りです。
少し言い訳をさせてもらうと、
・練習に時間がかかる
・納得のいくテイクがなかなか取れず時間がかかる
といったように、無理に通して録るよりも部分ごとに録音し丁寧に繋ぐ方が圧倒的に効率が良いです。
「1フレーズを完璧に弾けるまで練習する」よりも「自然につなげられる編集スキルを身につける」方がタイパが良く、慣れると頑張って録音するよりもクオリティが上がると感じています。
ただし、これは"楽曲制作"における話です。
もしギターを録音する目的が"ギターの上達"である場合はこの限りではありません。
少し長めに録音
ギターの録音時は、あとで綺麗に結合するための前準備として"前後に少し余裕"を持たせて録音していきます(詳しくは後述)。

納得のいく録音ができたら、オーディオファイルをそれぞれのパートのトラックへ移動させておきます。
この流れで1曲分のギター×必用なパート分、ひたすら録音していきます。

1文で簡単に書くけど、どのフレーズもこだわって撮っているからかなり大変...。
ギターの録音は、
⚠️細かく分割しすぎるとどうしても不自然さが増す
↓
⭕️分割は最低限に抑えるのがベスト
しかし最近は、
⚙️機械的・非現実的なフレーズを作る
🤖人間離れした演奏表現を目指す
という制作スタイルを"あえて"行う場合もあります
オーディオファイルの結合
1曲分の録音が終わったら、次はオーディオファイルの結合作業です。
僕はこの後リアンプを行うため、ここで繋ぎ合わせるのはウェット音ではなくドライ音になります。

切って結合するだけでしょ!簡単だね。

意外と気をつけないといけないこともあるよ。

何も考えずに結合しても、一見問題なさそうに思えるかもしれません。
波形上も自然に見え、音を聞いても違和感なく感じることもあります。
しかし波形をしっかり拡大してみると、
・結合部分に段差ができている
・波形の形が不自然になっている
といったことが起こっている場合があります。

波形って難しくてよくわからないけど、それは何か問題があるの?

こういった波形の状態だと、繋ぎ目部分で「パチッ」といったクリックノイズが発生することがあるよ。
このクリックノイズは最終的に楽曲の雑音としてしっかり残るため、必ず無くさなければなりません。
僕は初心者時代、こういったことを知らず
何も考えずにどんどん結合していました。
その結果、
⚡️いたるところでクリックノイズが発生
当時は原因がわからなかったため、
🧹iZotopeのRXでクリックノイズを後処理で除去
という方法をとっていました。
後から除去できるとは言え、
🎸最初から入れないのがベスト!
ゼロクロスで結合

オーディオファイルってどう結合するのが正解なの?
オーディオファイルを結合する際、
・ゼロクロスで結合
・クロスフェードをして結合
この2パターンで行うことが多いです。

僕はゼロクロス地点で結合しているよ。
ゼロクロスとは、波形の振幅(上下の振れ幅)が、真ん中の線に交わるポイントのことです。
結合する音源がこの位置で交わった箇所同士を結合することで、クリックノイズを発生させず繋ぐことができます。
また、この際2つの波形はできるだけ同じような形をした箇所同士で結合するようにしましょう。

僕がギターを録音時にフレーズの前後を少し余分に録音しているのは、まさにこのためです。
必用な部分だけをピッタリ録音してしまうと、結合できる位置が限られてしまいます。

最後の音を少し伸ばすとかしていた時期もあったけど、うまく繋がらず撮り直しとかもよくあった...。
対して前後に少し余裕を持たせて録音しておけば、結合できる範囲が広がって違和感なく繋げやすくなります。

結合する音源に同じ音を弾いている部分があれば、自然に繋げやすそうだね!
なお、ゼロクロスやクロスフェードによる詳しい結合方法のコツや重要性については、別の記事で解説していきます。
タイミング補正
歌い手さんと関わる機会がある方は"タイミング補正"や"ピッチ補正"という言葉を聴いたことがあるかもしれません。
これらは録音後の音源に対して、タイミングや声のピッチ(音程)を曲に合わせて調整する作業のことです。
僕はギターを録音した後にタイミングの補正のみ行っています。

ただのズルじゃん。

失礼な!!プロでもしているし、よくやることだよ。
極々稀に「補正はズル」だと発言する人も見かけます。
しかし僕は、「音源のタイミングやピッチの補正は楽曲クオリティを高めるうえで欠かせない」という考えです。
もちろん自分のできる範囲で妥協せず録音することは大前提ですが、その上で補正は積極的に取り入れるべき作業だと思っています。

ピッチの補正はしないの?

ほとんどしないよ。ギターにおいてピッチ補正の必要がある=チューニングの狂いかシンプルにミスしてるってことだから撮り直すかな。
もちろん、ギター録音においてピッチ補正をしても問題ありません。
僕も何度かしたことはあります。
補正前後の比較
まずは補正前後の比較音源を聴いてください。
タイミング補正等に触れたことのない方は、

補正でここまでいけるの!?
と、驚くかもしれません。
一応言っておきますが、補正前の音源は"あえて"ズラして弾いています🥹

これ、別の音源じゃないの...?
全く別の音源に感じるかもしれませんが、"補正無し"のタイミング補正を行なったものが、"補正有り"の音源です。
ここまでタイミングのズレが激しいギター音源でも、あまり違和感を感じさせずに補正することができます。

これは初心者ギタリストでもカッコよく見せられそうだね!!

そうだね!でも、さすがにここまでタイミングがズレた音源を補正するのはお勧めしないかな。
補正の方法
タイミングやピッチ補正として一番よく挙げられるのは、"メロダイン"です。


これは確かによく見るね。
メロダインはピッチもタイミングも自然に補正してくれるため、歌の補正には最適です。

僕も歌の補正には必ず使用しているよ。
一方ギターの場合、僕はタイミングしか補正せずFlexの方が使い勝手が良いと感じています。
メロダインは非常に優れた
ピッチ・タイミング補正ツールです。
しかし、
🐝バグが多い
👩💻やや使いづらい
のように感じることが多々あります。
そのため僕は、
🎸ギターはFlexで補正
🎤歌はメロダインで補正
のように使い分けています。
注意点として、FlexはLogicの付属ツールのため、Logicでしか使えません。
他のDAWを使用している方は、そのDAWに付属している補正ツールかメロダインを購入しましょう。

Studio Oneにはメロダインが付属されているよ!
詳しくは別の記事で解説しますが、Flexでは以下のように補正していきます。

少し難しそうに感じられるかもしれませんが、慣れれば先ほどくらいの補正であれば1分もかからずにできてしまいます。
補正はドライ音で!
ギターの音を補正する際、僕は以下の理由でウェット音ではなくドライ音で行っています。

歪んだ音を補正するとやりづらい上、補正の違和感が出やすくなっちゃう。
【ウェット音を補正】
✍️加工された音に対して補正
後から音作りをやり直す場合、
❌リアンプした音源に対して再度補正が必要
【ドライ音を補正】
✍️素材そのものを補正する
↓
🎸後からエフェクターで音を加工
後から音作りをやり直す場合、
⭕️補正したドライ音をリアンプするだけ

さっきの補正例の音源はそうやって補正したんだね!

ごめん、あれはリアンプ面倒だったからウェット音補正した。

...えっ。
音量を調整することも可能
補正は"タイミング"や"ピッチ"のみだと思いがちですが、音量を補正することもできます。
音が小さすぎた部分の音量を持ち上げたり、逆に大きすぎた部分だけ音量を下げたりといったことも可能です。

割と何でもできちゃうんだね。

でも補正するほど違和感は出やすいから、頼りすぎは禁物だよ。
リアンプ
ドライ音のタイミング補正が終わったら、最後にリアンプです。
リアンプは曲の最初から最後まで行います。
なお、ここまでで撮ってきたウェット音は思い切って消してしまいます。

消しちゃうの!?どうして録ってたの?

確認用としてだよ。全体の流れを聴き直す度リアンプかけてたら面倒だからね。
もし不安な場合は削除前に、音源として書き出しても良いかもしれません。
なぜリアンプをするの?
リアンプをする主な目的は、「後から音作りを変更すること」です。
しかし僕の主な目的は少し違い、「より自然なギター音源に仕上げるため」にリアンプを行っています。
これまでの流れは、
🤝まずはオーディオファイルを結合
✍️その後、タイミングを補正
この作業を、歪みエフェクトがついた状態でやってしまうと、
⚡️音質が劣化する
⚡️接続部分に違和感が出やすい
さらにリバーブやディレイを使用していた場合、
⚠️結合部分で残響が途切れてしまう
こうしたトラブルを防ぐために、
♻️ドライ音で結合→補正→リアンプ
の、順で行っています。
GT-1000でリアンプをする利点
僕はプラグインではなく、実機エフェクターであるGT-1000を使って録音・リアンプを行います。
実機の大きな利点は、繰り返しにはなりますが"パソコンのCPU負荷を抑えられる"ことです。

パソコンのスペックに左右されないのはいいよね。
これともう一点、"スイッチやペダルが簡単に使える"という利点もあります。

MIDI外部のペダルを使えばプラグインでもできるけど、設定が面倒だし案外高い...。
GT-1000には「TONE STUDIO」というパソコン上で音作りができるソフトがあります。
これを使えばプラグインと同じような感覚でパソコン上で直感的な音作りができ、スイッチやペダルへの割り当ても簡単です。


これは便利そうだね!
スイッチやペダルをリアンプ中に使えることで、
・途中でエフェクト切り替える
・ペダルを使って動的なフィルターをかける
・部分的にディレイをかける
といった操作が容易にできます。
一方で、リアンプをせずエフェクトのかかったウェット音を結合した場合、エフェクトの切り替え部分に違和感が出やすくなります。

特にディレイは残響が途中で切れたり逆に唐突に始まったり、どうしても不自然になりがち。
しかし実機でのリアンプをすれば、スイッチやペダル操作による自然なタイミングでのエフェクト切り替えが可能です。

これだとディレイの残響も自然に残せそうだね。
一発撮りをしたようなクオリティ
ウェット音を結合・補正した場合、ギター音源単体で聴くと違和感を感じる部分が出てしまいがちです。

ミックスすれば違和感を感じづらいから、それでも良いと言えば良いんだけどね。
しかし、
ドライ音を違和感なく結合・補正
↓
リアンプ
こうすると、あら不思議「まるで一発撮りをしたかのようなクオリティ」の音源ができちゃいます。

リアンプって万能すぎてずるいね。

僕も初めてリアンプしたときあまりの便利さに感動したよ。
さらに、
ギターのドライ音に対して、EQやコンプを軽くかける
↓
リアンプ
こういったギター本体の出音をぶち壊すようなリアンプも可能です😈
完成
以上が僕のギター録音における、一連の流れです。

ただ弾いて録るだけってわけでもないんだね。

その分、いいギター音源になっているよ!!
DTMを始めたばかりの頃は補正やリアンプ、ゼロクロスでの結合といった知識はありませんでした。
そのため当時はウェット音だけを録音し結合するだけでしたが、DTMに関する知識が増えるにつれて工程が増え、今の形になりました。
その分、最初の頃のギター音源と比較するとクオリティの差は歴然です。
まとめ
以上、DTMを3年間続けてたどり着いたギター録音方法の紹介でした。
ここで紹介した方法はあくまでも"僕自身の録音方法"です。
これが正解というわけではありませんし、すべての人に最適な方法というわけでもありません。
僕は「ドライ音を補正しリアンプで最終的な録音」という方法でギター音源を作っていますが、中には「補正・リアンプに頼るなんて邪道」と考える方もいかもしれません。
それ以前に「ギター録音は絶対アンプをマイクで録るべきだ」という意見もあります。
しかし、録音方法には"必ずこれが正解"という方法はないと僕は思っています。
最終的に楽曲として仕上がるのであれば、どんな方法であっても問題ないはずです。

何より楽しむことが一番!
この記事が、ギター録音方法で悩んでいる方のヒントや参考になれば嬉しいです。
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