
自分の曲、ギターの迫力が物足りないな...。
ギター単体ではかっこよく録れているのに、ミックスをしていくと
「音に厚みがない」
「左右の広がりが感じられない」
このように悩む方は多いのではないでしょうか。

そんなときに効果的なのがダブリング!
この記事ではダブリングで迫力・厚みのあるギターサウンドを作り出す方法とコツについて、DTM初心者にもわかりやすく解説します。
運営者情報

1102(ひとつ)
2022年8月「ヒトツノオト」でデビューしたギター歴10年以上のボカロP。
バンドサウンドを主軸とした楽曲を制作。
ニコニコ動画、YouTubeに楽曲動画配信中。
ダブリングって何?


そもそもダブリングって何なの?

同じギターフレーズを重ねて音に厚みや広がりを加える手法のことだよ。
ギター録音における"ダブリング"
ダブリングとは、同じフレーズを2回以上録音して重ねるテクニックのことです。

ダブリング時、録音する回数に決まりはありません。

"3回録音"するは聞いたことあるけど、それ以上は聞いたことないかな。
重ねる数が多いほどミックスが難しくなるため、まずは2回から挑戦してみるのがおすすめです。
実際に聴いてみよう

ダブリングで音がどう変わるか聴いてみたい!!
実際にダブリングをした音源としていない音源を用意しました。
・音の迫力
・音の広がり方
このあたりを意識しながら聴く比べてみてください。

スマホからだと分かりづらいから、できればスピーカーかイヤホンで聴いてみてね。
"ダブリング有り"の音源の方が、なんとなく音の迫力・広がりを感じられると思います。
・ダブリングはどう再現するのか
・この音源はどのように作っているのか
このあたりはまた後述します。
なぜダブリングすると音に迫力がでるの?

ダブリングすると音に迫力が出るのはわかったけど、、、どうして?

わずかに違う音を重ねるとステレオ感が出て、それが迫力につながるよ。
耳が「わずかな違い」を広がりと認識
人間の耳は左右から届く音を、
・全く同じ:単調に感じる
・少しズレている:空間的な広がりを感じる
のように捉えます。
ダブリングで「左右が少しズレている」状態をあえて作り出すことで、自然な立体感を生み出せます。
モノラルとステレオの違い
ギター録音は、基本的に"モノラル"で行います。

ステレオで撮る場合もあるけど、理由がなければ基本的にモノラル録音を推奨!

普通に録音する分にはモノラルで良さそうだね。
モノラル音源のパンを0にして配置すると、スピーカーの中央からひとつの音が出るイメージです。
一方、ステレオ音源ではパンを0に配置しても左右から違う音が聴こえ、音の広がりや奥行きを感じられます。


そうなると、モノラル録音したギター音源で音の広がりを出すのは難しそうだね。

そこでダブリング!!
モノラルで2回録音したギターを、それぞれ左右にパンを振って配置するとどうなるでしょうか。


左右から別の音が鳴って...ステレオだ!!
ダブリングで撮ったギターは、同じフレーズでも
・弾き方
・音の強弱
・微妙なタイミング
が微妙に異なり、全く同じ音源にはなりません。
この"微妙に違う音"を左右に配置することで「自然なステレオ感」が生まれ、ギターが立体的に聴こえるようになります。
音の厚みを作り出す
ダブリングした音源を左右に振り分けることで、空間的な広がりと同時に音に厚み・迫力が加わります。
この厚みはロックやメタルなど激しめのバンドサウンドでは非常に重要で、1本のギターフレーズだけで何倍にもパワーアップしたように聴かせることができます。

よく"ギターの壁"だなんて表現されるよ。
特に歪んだサウンドでは"左右のわずかなズレ"が音の密度を増幅させ、音同士が干渉し「壁のように迫る」といった印象を与えます。

ギターをメインにした音楽だと聴き応えのある曲になりそうだね!
ギターのダブリング方法3選

ここで紹介するギターのダブリング方法は、以下の3点です。
「より自然なダブリング感」を得る方法としては、
2回録音>コピー>プラグイン
の順です。
「時間を短縮できる簡単な方法」となると逆で、
プラグイン>コピー>2回録音
の順になります。
ここでは、それぞれ音源を用意しつつ解説していきます。
ドラムとベースに関しては全て同じ音源を使用しており、ギターのみ音作りを変えながらの解説です。

スマホスピーカーだとわかりづらいから、できたらイヤホンやスピーカーで聴いてね。
ダブリングしていない音源
まず初めに、ダブリングしていない音源です。
記事の冒頭で聴いてもらった音源と同じですが、一応もう一度載せておきます。

真ん中から音がズドーンってくるイメージだね。

これはこれで悪く無いね(笑)
この音源のギターは、パンを0(センター)に配置してリバーブで音の広がりを演出しています。
また、キックとベースとの棲み分けをするために、MS処理でMIDの低域をやや削っています。
2回録音する
最も基本で効率的なダブリング方法は、「ギターを2回録音する」ことです。
こちらも記事冒頭で聴いてもらった音源と同じですが、もう一度載せます。
方法はとてもシンプルで、「同じフレーズを2度録音してそれぞれ左右にパンを振りわける」ことです。
1曲通して2度録音することになるため、シンプルではありますが非常に手間のかかる作業でもあります。

初心者にとっては2度同じの弾くなんて難しくない!?

逆に言うと、"同じように2回弾く"練習になっていいかもよ?
手間がかかり大変な分、より自然に厚みのあるサウンドを作り出せます。
コピーして左右に振る
次に紹介するのは、「録音した音源をコピーして左右に振る」方法です。
この方法はギターを実際に弾かなくても、音源プラグインを使っている場合にも有効な方法です。

でも全く同じ音源をコピーして並べただけだと音の広がりは出ないんじゃない?

そうならないように、あえてタイミングやピッチをずらしていくよ。
以下の音源は、コピーした音源のタイミングとピッチを少しずらし、それぞれを左右に振ったものです。

ん?何かおかしい気が...。
少しわかりづらいかもしれませんが、
・全体的にエコーがかかったようなイメージ
・部分的にモジュレーションがかかったような音
のように感じられます。

特に後半部分は違和感が強いね。
この音源ではタイミングもピッチも全体を同じように動かしただけなので、もっと丁寧に調整していけばさらに自然なダブリングを作ることは可能です。
とは言え、元は同じ音源であることから2度録音することと比べると自然さには欠けてしまいます。
コピーした音源でステレオ感を得るには?
音源をコピーしてそれを左右に振っただけでは、ステレオ感は得られません。
そのため、コピー先の音源に
・タイミングを前後に少しだけずらす
・ピッチを少しずらす
などの処理を加える必要があります。
ただし、この方法は手軽に使える反面音がやや機械的になり、自然さには欠けます。
これらのズレを利用したダブリングでは、
🕐タイミングをずらす
→⏳ショートディレイのような効果
〽️ピッチをずらす
→🔈コーラスのような効果
といった効果が得られます。
ただしズレが大きすぎると、
⚠️タイミング:"エコー"のようになり不自然
⚠️ピッチ:極端な"モジュレーション感"が出て違和感
こういった違和感や不自然さを与える原因になるため、少しのズレで留めるのがコツ!
コピーした音源のタイミング・ピッチをずらす方法は手軽に使える反面、音がやや機械的で自然さには欠ける点には注意が必要です。
ギターに慣れるまでは有効な手段
音源コピーによるダブリングは、2度録音するのに比べると自然さに欠けてしまいます。
しかし、

2度同じギターを弾き切る自信がまだない...。
といったギター初心者の方は、まず"ダブリングを試してみる"といった際に有効な手段といえます。

この方法でダブリングに慣れつつ、同じギターを2回録音できるように練習もしていこう!
プラグインの使用
最後に紹介する方法は「プラグインを使用したダブリング」です。

ダブリングさせるプラグインは"ダブラー"って呼ばれるよ。
恥ずかしながら、僕はダブラーをあまり使用したことがありません。
そのためかなり雑ですが、以下の音源はダブラーを使用してダブリングさせたものです。

いやいやwwwこれは酷すぎるでしょwww
はい、僕もそう思います🥹
全体的に音がうねうねしており、聴いていて気持ちが悪いです。

これ、上手な人がすればもっと自然なダブリングができるのかな...。
そもそも”ダブラー"とは?
ダブラーとは、微妙なピッチやタイミングのズレを作りだして擬似的なダブリングを再現するプラグインです。

手軽に音の厚みや広がりが作れるんだね!
ダブラーによるダブリングは、
🕰️作業時間を短縮したい
🎸フレーズが複雑で2回演奏するのが困難
といった場合に有効!
⚠️あくまで”擬似的”なダブリングであり、2回演奏したダブリングと比べると"機械的”になりやすい
🌳自然なステレオ感が欲しい
といった場合には、
🎸2回演奏する
〽️コピーしてタイミングやピッチをずらす
ダブラーを使うよりやや手間ではありますが、これらの方法がおすすめです。
先ほど載せた「ダブラーを使用したダブリング音源」は、多少なり違和感を感じたと思います。
もちろんこれは僕の技術不足もありますが、「ダブラーでのダブリングは違和感を感じやすい」との意見が多くみられるのも事実です。
プラグインを使用するよりは、コピーして編集していった方が自然なダブリングを再現できます。

プラグインをかけるだけだから、手間は少ないけどね。
使用したダブラー
僕が今回使用したダブラーは、「iZotope Vocal Doubler」です。


無料のプラグインなんだね!!

プラグイン名に"Vocal"ってついているけど、ギターや他の楽器に使ってもOK!
サイトにデモ動画が載っていますが、これを聴く限りだと正直自然なダブリングは難しいかも...といった印象です。
普段2回録音しダブリングを行なっている身としては、このプラグインで作る音は「"ダブリング"より"ボコーダー"に近いかなぁ」と感じます。
代表的なダブラー
僕は持っていませんが、最も代表的なダブラーは「Waves Doubler」です。
WavesのDoublerは単品で約5千円で購入できますが、約1万5千円の「45種類のプラグインを含むGoldバンドル」にも収録されています。
いろいろな種類のプラグインが収録されており、DTMを始めたばかりで「有料プラグインを持っていない」という方は、持っておくと何かと便利なバンドルです。

こちらもサイトにデモ動画があり、iZotopeのVocal Doublerと比べると「調整できるパラメータが多くより自然なダブリングができそう」といったイメージです。
とは言え、2回録音するのと比べるとやはり機械的に聴こえます。

ピッチをずらしているからやや"コーラスエフェクト”寄りな音になっているね。
自然なダブリングをするコツ

ここからは、ダブリングを自然に仕上げるコツについて解説します。
※「2回録音する方法」のみ有効なポイントも含まれています。
演奏面におけるコツ
演奏時に意識したいポイントは以下の5点です。
ギターのダブリングでは、各テイクのピッチやタイミングの「わずかな違い」が音に広がりや迫力をもたらしてくれます。
しかし、
・弾き方のニュアンスが大きく違う
・タイミングが極端にズレている
といった場合は、逆に不自然さが目立ちます。
また、ノイズにも注意が必要です。

ノイズが多いと、ダブリングによってノイズまで強調されちゃう。

その時は電源類やケーブル類の見直しが必要だね。
さらに、各テイクでチューニングが合っていないと、意図しないモジュレーション感が出て違和感の原因になります。

録音の時はチューニングは確実に合わせよう!
関連記事:
タイミングと音量の調整
ギター演奏では、特に初心者にとって"タイミングや音量を同じように弾く"のは簡単ではありません。
そんなときは、「タイミングや音量を補正してしまう」のもひとつの手です。
タイミングの補正

タイミングの補正って、ずるくない!?

全然そんなことないと思うよ。
もちろん、あまりにもズレが大きすぎる場合は"もう一度録音し直す"ことがベストです。
これは間違いありません。
ただ、ギター初心者の場合

これ以上撮り直しても良いテイクが撮れる気がしない!!!
このように感じることもあるでしょう。

なんならギター歴10年あってもよく感じるよ。
そういったとき、

2回同じようにだなんて弾けないから、もうダブリングは諦めようかな...。
せっかくダブリングに挑戦したのに、こうなってしまうのはもったいないです。
それよりは、思い切って補正してしまいましょう。
実際、僕も録音した音源に対してはLogicの「Flex-Rythmic」という機能でタイミングの補正を行っています。

タイミングが極端にズレていたとしても、以下のように自然に補正することが可能です。
一応言っておきますが、補正無しの音源は"わざと"ずらしてますからね🥹
また、Flexではタイミングだけでなく音量の補正も可能です。

部分的に大きすぎた場所の音量を下げたりできるね。
ちなみにこの音源は別の記事用に作った音源で、ダブリングをせずパンを0にして流しています。
ギターの補正をしていることも含めた「僕が実際に行なっているギター録音方法」について紹介した記事もあります。
興味のある方はぜひ、こちらもご覧下さい。
打ち込みの場合

ギターを打ち込む場合はタイミングをずらしたりは難しいよね。
こう思う方もいるかもしれませんが、ギターを打ち込む場合でもタイミングやニュアンスにズレを出すことは可能です。
方法はシンプルで、「MIDIのタイミングやベロシティを少しずつ変えながら打ち込む」だけです。


ギターを弾いて録音している身としては、気が遠くなりそうな程大変な作業...。
この方法で「本当に打ち込み!?」と思うほど自然なギター音源を作っている方もいます。
こうした"リアルなギター打ち込みギターとダブリングのテクニック"を身につければ、録音音源に劣らないクオリティのギターサウンドを作り出すことも可能です。
パンニングとEQで調整
最後に紹介するダブリングのコツは、ミックス段階で行う「パンニングとEQ処理」です。
パンニングやEQによる調整は、楽曲の特徴や雰囲気、作り手の好みによって変わります。

"これが正解"って方法は無いってことだね!

基本を押さえたら、あとは自分の良い方法を見つけていってね。
パンニング処理
パンニング処理とは、音を左右に振り分けることです。
ギターは主に、
・右(R):バッキングギター
・左(L):リードギター
のように配置されます。

ダブリングをする場合は、メインとダブリングの配置を逆にしよう。
バンドサウンドを主体とすると、以下のような配置例があります。

この"メイン音源"と"ダブリング音源"の位置に正解はなく、
・左右に振り切る
(メイン:L100、ダブリング:R100)
・振り切らずに配置
(メイン:L50、ダブリング:R50)
など、人によって配置位置は様々です。
ちなみに僕は、音量も調整しながら以下のように配置することが多いです。


少し位置をずらして配置しているんだね。

バッキングとリードが干渉しないように位置に調整してるよ。
パンニングの位置や音量は制作する楽曲によって異なります。
僕はシンセを多用する曲が多いため、シンセの位置に合わせてギターの位置も都度調整しています。
EQ処理

ダブリングでギタートラックが増えて、音がゴチャついてきちゃった...。

そんなときはEQで調整!

バッキングギター+リードギター構成の場合、ダブリングをさせるとギター音源が合計で4トラックになります。
ギターが4トラックもあると音が重なってゴチャつくため、適切なEQ処理が重要です。
EQで調整するポイントは楽曲によって異なりますが、”抜けの良いギター"を目指すには以下の点を試してみてください。

EQ処理は音を良くする魔法のツールだね!

うーん、それはちょっと違うかも。
EQ処理は、「音を整理して楽曲に馴染みやすくする」ことが目的です。
「音を良くする」「音質を向上させる」ものではなく、あくまでも「他の楽器と混ざりやすくする」ための作業だということを頭に入れておきましょう。
ギターを良い音で仕上げるには、「録音段階でしっかりと音にこだわる」ことが何より大切です。

タイミングは後から違和感なく補正できるけど、音に関しては補正しにくいよ。

良い音で録音した上で、EQで音を整理していくイメージだね。
まとめ
以上、ギターに厚み・迫力を出すためのダブリング方法と自然にダブリングを行うコツを紹介しました。
ダブリングはDTMでの楽曲制作において、「ギターをより厚く、より立体的に」聴かせるための重要なテクニックです。
ギターのダブリングには主に、
・同じフレーズを2回録音する
・同じ波形を少しずらして重ねる
・プラグインの使用
といった方法があります。
さらに、適切なパンニング・EQ処理を行うことで、より自然なダブリングを行うことが可能です。
ぜひこの記事を参考に、"かっこいい厚みのあるギターサウンド"を目指してみてください。
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