YAMAHAのHSシリーズは、多くのDTMユーザーに愛用されている定番モニタースピーカーです。HSシリーズはフラットな音質と正確な音像定位が特徴です。
従来からある「HS5」「HS7」「HS8」に加え、2023年11月には新たに「HS3」と「HS4」がHSシリーズに仲間入りしました。
本記事ではこれらHSシリーズ5機種のモデルごとの違いや失敗しない選び方について、初心者向けに詳しく解説していきます。
運営者情報

1102(ひとつ)
2022年8月「ヒトツノオト」でデビューしたギター歴10年以上のボカロP。
バンドサウンドを主軸とした楽曲を制作。
ニコニコ動画、YouTubeに楽曲動画配信中。
YAMAHA HSシリーズの特徴
YAMAHAのHSシリーズは多くのDTMerやボカロPに愛用されているモデルです。僕もモニタースピーカー導入を検討していた際、Xで「おすすめのモニタースピーカーを教えて」と投稿したところ、多くの方からHSシリーズをお勧めしていただきました。

いろいろ悩んだ結果、HS5を買って大満足!!
モニタースピーカーは基本的に高価です。HSシリーズも通常のスピーカーと比較すると非常に高価なスピーカーではありますが、モニタースピーカーとして見るとリーズナブルな価格帯です。そういった面でもモニタースピーカー導入の1本目として非常におすすめです。僕も今「おすすめのモニタースピーカー教えて」と聞かれたら間違いなくHSシリーズをおすすめします。
HSシリーズは多くのユーザーに支持されていることから「標準的な音」と認識されることも多いです。そんな多くのDTMer・ボカロPに愛用されているHSシリーズの特徴を見ていきましょう。
また、本記事ではDTM初心者向けに詳しく解説していきます。難しい言葉も出てきますが、あまり難しく考えず気楽に見ていってください!
フラットな音質
HSシリーズは音は色付けがなく、原音に忠実なサウンドが特徴です。高域から低域までフラットに再現され、音の定位も正確に捉えることができます。また、高域と低域ではそれぞれ専用のパワーアンプで増幅するバイアンプ方式を採用しており、音質変化を抑えた均一なサウンドを実現しています。
と、難しい言葉を並べられてもわかりにくいと思いますので、とりあえず
というスピーカーです。例えば低音が大きく強調されるようなスピーカーでミックスを行うとします。そのスピーカーではいいかんじに聴こえても他のスピーカーで聴いた時、低音が弱く聴こえることがあります。
また、音が広がりやすくステレオ感の強いスピーカーでミックスを行うと、他のスピーカーで聴くと音の広がりが少ないモノラルイメージの強く聴こえてしまうかもしれません。
そのため、DTMで楽曲制作を行うときはHSシリーズ含め色付けがされていないフラットな音が出るモニタースピーカーが最適です。
設置環境に合わせたセッティングが可能

HSシリーズのスピーカー背面には、「LEVEL」「ROOM CONTROL」「HIGH TRIM」と呼ばれる音質や音量を調整する機能が備わっています。これにより設置環境に応じた細かなセッティングが可能です。
いろいろ弄れる場所があると混乱しそうですが、特に音の鳴り方に違和感の感じない方はデフォルトのままでも問題ありません。
それぞれのコントロールの使い方を見ていきましょう。
LEVEL

LEVELは入力レベルを調整する機能です。最小(MIN)にすると音量がゼロになり、最大(-10dB)にするとスピーカーが受け取る入力信号のレベルが最大になります。

...最大が-10dB!?!?!?!??
ってなりますよね、僕も戸惑いました。これは普通のオーディオ機器のように「好みの音量に設定するためのもの」ではありません。基本的に一度設定したら接続する入力機器を変えない限りは弄りません。
ざっくり解説すると、
・オーディオインターフェイスやミキサーなどの業務用の音響機器などのバランス入力:+4dB
・家庭用オーディオ機器などのアンバランス入力:-10dB
で設定します。
DTMにおいてはオーディオインターフェイスからモニタースピーカーへ入力(接続)することが多いと思います。その場合、12時の方向である+4dbに設定しておき、実際の音量はオーディオインターフェイス側で調整します。

僕はオーディオインターフェイスから入力しているから+4dBにしているよ。
ROOM CONTROL

ROOM CONTROLは、スピーカーを壁際に配置した際に強調されがちな低域を補正する機能です。設置環境に応じて調整することで、より正確なモニタリングが可能となります。
-2db、-4dbの2段階で調整できます。補正が不要な場合は0dbにしておきましょう。

僕は低音の鳴りに違和感を感じなかったから0dBのまま使っているよ。
HIGH TRIM
HIGH TRIMでは、高音域を調整できます。ROOM CONTROLとは対照的な機能ですが、用途としては同じです。高音域が強調されやすい部屋や逆にこもって聴こえる部屋などで調整することで、正確なモニタリングが可能となります。
この機能はカットのみのROOM CONTROLとは異なり、ブーストも可能です。+2dbと-2dbがあり、HIGH TRIMの機能を使用しない場合は0dbにしておきましょう。

僕は高音の鳴りに違和感を感じなかったから0dBのまま使っているよ。

(...つまり何もいじってないのね)
コスパが最強
HSシリーズはコスパが最強という点でも、多くのDTMerに使われている要因となっています。モニタースピーカーとしては低価格帯でありながら、フラットな音質だけでなく高品質で耐久性に優れています。見た目や触り心地にも高級感が感じられます。
ただし高級メーカーであるFocalなどと比較すると、音質が劣ってしまうのも事実です。大型サイズのHS8はプロフェッショナルな環境での使用も可能ですが、価格的に他社メーカーも視野に入ってくるでしょう。
とは言ってもモニタースピーカーなので価格はそれなりにします。通常のスピーカーであれば数千円で手に入りますが、HSシリーズは最小のHS3でも2本ペアで2万円以上します。
シリーズごとの特徴
末尾の文字の意味

HSシリーズは、「HS5」のように末尾に数字が付きます。この数字はウーファーのサイズを表しており、数字が大きくなるほどウーファーのサイズが大きくなります。また、ウーファーが大きくなることで出力できる音量も増加し、低音の再生能力も向上します。もちろん価格も向上します。
さらに後ろに「HS5I」や「HS5W」のようにI、Wがつくものもあります。また、これらが組み合わさった「HS5IW」もあります。
I = リギングポイントを装備

末尾にIがついたものはリギングポイントを装備しており、吊設置を行うためのものです。天井などに吊るして使用したり卓上に固定して使用したりする場合はこちらのモデルを選択しましょう。
このモデルには天面、両側面、底面にそれぞれM5のネジ穴が2個ずつ設けられています。別売りのスピーカーブラケットを使用することで卓上や壁、天井に取り付けることが可能です。

別売りの金具が約1万円、リギングポイントの有無で1万円近くの差があるため、これをすることで約2万円追加でかかります。
小型モデルとして登場したHS3とHS4にはリギングポイント付きのモデルはありません。もし将来的に吊設置を考えている方はHS5以上のモデルを選択する必要があります。
W = 仕上げ色がホワイト
HSシリーズは基本的にボディ色が黒色ですが、末尾にWがついたものは仕上げ色がホワイトになっています。他にスペックなどで違う点はなく金額も同じため、好みで選びましょう。
僕は悩みましたが白色のスピーカーがかっこよく感じたのでWを選びました。すごくおしゃれです。

また、末尾にIWとついたものはリギングポイントがついた白色のスピーカーとなります。
スペックと特徴の比較
ここからは各サイズごとのスペックの違いを見ていきます。どのモデルもリギングポイントがついたもの(I)とホワイト色(W)のものがありますがここでは省略し、末尾の数字のみでそれぞれの違いを見ていきます。
I・Wがついても以下の表とスペックは変わりませんのでご安心ください。リギングポイントがつくことでサイズが変わったり、ホワイトになることで低域がしっかり出るようになったりということありません。
モデル | ウーファーサイズ | ツイーターサイズ | 寸法 | 重量 | 再生周波数帯域 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
幅 | 奥行き | 高さ | (-10dB) | (-3dB) | ||||
HS3 | 3.5インチ | 0.75インチ | 132mm | 223mm | 189mm(R側:177mm) | 2.8kg(R側:2.1kg) | 70Hz-22kHz | 85Hz-20kHz |
HS4 | 4.5インチ | 1インチ | 150mm | 240mm | 213mm(R側:203mm) | 3.7kg(R側:3.1kg) | 60Hz-22kHz | 83Hz-20kHz |
HS5 | 5インチ | 1インチ | 170mm | 285mm | 222mm | 5.3kg | 54Hz-30kHz | 74Hz-24kHz |
HS7 | 6.5インチ | 1インチ | 210mm | 332mm | 284mm | 8.2kg | 43Hz-30kHz | 55Hz-24kHz |
HS8 | 8インチ | 1インチ | 250mm | 390mm | 334mm | 10.2kg | 38Hz-30kHz | 47Hz-24kHz |
上記の内容を見てもらうと、HS3とHS4、HS5以上のモデルはそれぞれ高域の再生周波数帯域が同じであることがわかります。しかし低域は数字が上がるにつれて帯域が広がっていることが確認できます。
これはウーファーサイズが上がることで低域の再生能力が向上するためです。しかしそれと同時に本体のサイズと重量、もちろん価格も向上します。
また、HS3とHS4はHS5以降のモデルと比べ新しいモデルであり、ややデザインが異なります。L側前面にボリュームノブとイヤホンジャックがあり、背面にはROOM CONTROLなどの音質調整コントロールが搭載されています。そのため、L側のサイズがやや大きくなっています。
次項からHSシリーズの各機種を紹介していきます。また、HS3、HS4、HS5は2本ペア+XLRケーブル+スタンドのセット商品もありますので、そちらも合わせてご紹介します。スタンドやケーブルを持っておらず、こだわりのものも特にない場合はセット商品をお勧めします。


僕もHS5のケーブルとスタンドセットで買ったものをずっと使っているよ。
上の写真に写っているのがセットで購入したスタンドとケーブルです。上を見ればもっとノイズレスなケーブルやしっかりとしたスタンドもありますが、僕にはこれで全く不満を感じたことがありません。
HS3
HS3はHSシリーズの中で最も小さなサイズのスピーカーです。2023年11月に追加されたモデルで、前面にボリュームノブとイヤホンジャックがついています。
また、1本での販売はなく2本セットのみの販売となり、
・2本セット+スタンド
・2本セット+ケーブル
・2本セット+スタンド+ケーブル
での販売もあります。


HS4
HS4はHS3より大きなウーファーを搭載したモデルで、H3よりも低域の再生能力が拡張されています。HS3同様、2023年11月に追加されたモデルで、前面にボリュームノブとイヤホンジャックがついています。
また、1本での販売はなく2本セットのみの販売となり、
・2本セット+スタンド
・2本セット+ケーブル
・2本セット+スタンド+ケーブル
での販売もあります。


HS5
HS5はHSシリーズの標準的なサイズです。サイズ感や価格には定評があり愛用者が多い印象ですが、低域がやや弱いという意見も見られます。
基本1本単位での販売となりますが、
・2本セットでの販売
・2本セット+スタンド
・2本セット+ケーブル
・2本セット+スタンド+ケーブル
での販売もあります。


HS7
HS7はHS5よりも大きなウーファーを搭載しており、HS5の弱点である低域の弱さをカバーしてくれます。
基本1本単位での販売ですが、2本セットので販売もあります。

HS8
HS8はHS7よりもさらに大きなウーファーを搭載しています。しっかりとした低域を再生してくれるため、プロフェッショナルな環境にも対応します。ただしサイズ感が大きく、HS5の倍近い重量があるため、趣味でDTMをしている方には大きすぎると感じるかもしれません。
基本1本単位での販売ですが、2本セットので販売もあります。

HS8S
HSシリーズにはモニタースピーカーの他にこのHS8Sというサブウーファーがあります。HSシリーズの超低域をカバーし、より正確なモニタリングが可能となります。
サブウーファーは1本しか使用することがないため、単体での販売のみです。

用途別モデルの選び方

ここからは用途別に各モデルの選び方を解説していきます。

僕は低域が大好きだからHS8にHS8Sをつけるよ
と、思う方もいるかもしれませんが、スピーカーのサイズは部屋の広さなども考慮する必要があります。省スペースの部屋でスピーカーと壁が近いような環境で大きなサイズのスピーカーを使用すると、低音が過剰に強調されてしまいます。
スペースや利用目的を考えずに購入してしまうと、「低域が弱い」「低域が強調されすぎて音がブーミーになる」といった事態になりかねません。購入時にはこの点も考慮して選びましょう。
省スペースでカジュアルなDTM、動画・音声編集
- HS3
- HS4
省スペースでDTM、カジュアルなDTMには小型のHS3とHS4がおすすめです。また、動画編集や音声編集など、低域がそこまで必要とされない作業にも適しています。
サイズ感は省スペースデスクに丁度良く、接続端子にはHS5以降のモデルにはないRCAやステレオミニが搭載されています。これによるオーディオインターフェイスやミキサーといった機材がなくてもPCから直接音声を入力することができます。

手軽にモニタースピーカーを使えるのはいいね!
ただしPC本体のスペックによっては音質がよくないこともあります。音質面にこだわりたい方はやはりオーディオインターフェイスでの接続が必須となります。
さらに、前面にボリュームノブとイヤホンジャックが付いているのもポイントです。これにより手軽にボリュームのコントロールができ、夜間作業時などにイヤホンを使用しやすくなります。
本格的なDTM
- HS5
プロとまではいかないものの、DTMを本格的に取り組みたい方にはHS5がおすすめです。低域が弱いという意見も見られますが、自宅で行うDTMにおいては十分だと感じます。集合住宅や隣の家との距離が近い一軒家の場合はあまり大きすぎるスピーカーは近所間のトラブルになる可能性もあるため、このくらいのサイズが最適です。
というかこのスピーカーでも十分、ご近所トラブルレベルの音量を出せるポテンシャルは持っています。僕の部屋は防音室ですが、本気で音を出すとしっかり外まで音が漏れます。
もし「もう少し低域が欲しい」と感じた場合は、後からHS8Sを導入するという選択肢もあります。
プロフェッショナルなスタジオ環境でのDTM
- HS7
- HS8
プロフェッショナルなスタジオや防音環境を整備した自宅スタジオなど、大音量でリスニングできる環境にはHS7とHS8がおすすめです。
HS5では足りない低域成分を補ってくれ、さらに超低域までしっかりと再現したい場合はHS8Sも導入することでよりよい環境が作れます。
まとめ

YAMAHAのHSシリーズは、DTMerやボカロPに人気のモニタースピーカーで、多様な音楽制作や音声編集ニーズに応えています。特にフラットな音質と音質調整機能を備えており、コストパフォーマンスにも優れています。
各モデルは音質やサイズ、価格帯に応じて、趣味からプロユースまでさまざまなニーズに対応しており、自分に合ったモデルを選択しやすいのもHSシリーズの特徴です。ぜひ自分に合ったモニタースピーカーを選び、快適なDTM環境を作り上げてください!
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